読書と整体

【痛みの原因論】「何もしていないのに…」「じゃあ、何を考えて過ごしてたの?」

「いくらレントゲンで写しても、切り開いて見ても、借金も、失意も、嫉妬も見つからないよ。重要なのはそういうことなんだ。

幸いなことに、背骨は外から指で触るだけで、みんな喋っているんだよ。口は嘘をつくけれども、背骨は嘘をつかない。

人間は背中が表で、顔が裏なんだ。」

【野口昭子著 回想の野口晴哉 朴歯の下駄より】

 

野口晴哉先生の奥様である昭子さんの著書を、過去何度も読み返しております。
野口晴哉先生の金言が詰まっている書。

野口晴哉先生の書を読むと、科学の発達と共に、「見る目」が失われたことに気づかされる。

数値化できぬモノに、本質が潜んでいる。

 

強烈な痛みを繰り返す人は、強烈な抑圧があるものです。
感情を抑え込まざるを得ないのかもしれません。
そのこと自体に、自分自身が気づいていないこともあるでしょうし、気づかぬフリをしている場合もある。

 

身体は嘘をつかないし、自分自身には嘘をつけない。
「俺はやってない!!」と嘘をついたとしても、自分だけは嘘だと解っているわけで。

 

身体を痛めた人の、「オカシイなぁ。何もしてないのになぁ…」という言葉は毎日聞きます。

でも、「オカシイなぁ。何も考えていないのになぁ…」とは聞かない。

聞かないどころか、開業して17年間、一度も聞いたことがない(笑)

 

 

でも、考えていることが痛みを作り出しているのだとしたら。

 

 

痛めるには、「何かをして痛める必要がある」と考えがちですが、まったくそんなことはない。
もちろん、動作がきっかけで、痛みになることはある。
それはあくまで「きっかけ」に過ぎず。

同じ動作をしても、痛みが出ない人は五万といます。
痛めたご本人も、毎回その動作をすれば「100発100中で痛める」というわけではないでしょう。

 

何もしていないのだとしたら、発想を変えて、「最近、何を考えて過ごしていたのだろう」と内省してみる。

これはひとつの「瞑想の入口」として良いアプローチとなります。
目を閉じて、「最近、何を考えていただろう」と。

その出てきた思いを、「なるほど、俺は●●にムカついていたんだ」とか、「●●だからムカついたんだ」とか。
出てきた感情をそのまま思い返してみるのです。
そうやって、内省してみる。

内省していくことで、余計に腹が立ってくることがあるかもしれませんし、逆に気持ちが落ち着いていくこともあるでしょう。

それはその人にしか解りませんが。

どちらにしても、出てきた感情に善悪を付ける必要などなく、心に想いとして持ち上がってきたものをそのまま、「そう思ったんだった、そう感じていたんだった」と見つめていけばよいのです。

 

この切り口を知っているだけで、相当なストレス減ができるようになります。

電車の中で、時にはスマホをしまい、目を閉じてみる。
裡から湧き出てくる「思いを見つめてみる」のです。

 

 

冒頭の野口先生の言葉のように、借金で悩んでいる人もいれば、仕事がうまく行かずに途方に暮れている人もいるでしょう。

上司との折り合いが悪い人もいれば、家族を失って失意の中にいる人もいるかもしれない。

子供の受験で悩んでいる人もいれば、身近な人の成功に嫉妬している人もいるかもしれない。

 

生きるとは、毎日様々な出来事に遭遇し、常に思いを巡らせているのです。

普通に生きていると「嫌なコト」「ツライこと」ばかりを考えてしまうのが人間というものなのでしょう。

きっとそれが、「普通」なのだと思います。
要は、別に「悪いことではない」のです。

「こんなことを思ったらいけない」とか、「こんなことを感じる私は最低の人間だ」とかイチイチ落ち込む必要はありません。

私なんてそんなことでイチイチ落ち込んでいたら、とても生きていけません。
私なんて嫌なことがあると、「●ねバーカ」とか普通に思ってますから(笑)

そりゃあ口に出せとは言ってませんからね(笑)
出すなら出すで、自己責任で。
出したらスッキリするかもしれませんし、あなたのギックリ腰も一気に痛みが半減するかもしれませんけれども。ホントに(笑)

 

 

「そういう悩みが身体に緊張を生み、自律神経機能が~」というのは、机上の空論です。
まぁ、そうなのかもしれませんが、私が言いたいのはそういうコトではないのです。

「それを止めろ」と言ったところで、止まないのですから。

 

レントゲンに異常が映らなくても、心の中に借金で困っている自分を常に映し出している。

レントゲンに異常が映らなくても、心の中に嫌いな上司を常に映し出している。

レントゲンに異常が映らなくても、心の中に友達家族の成功を嫉妬している自分を映し出している。

 

うーん。
こう書いてみるとキツイ。

キツイけど、それが「ふつう」です。

「ふつう」って、素晴らしくキツイ。

「ふつう」って、素晴らしくキツイ上に、ちょっとオカシイことにも気づく。

 

この「普通の考えがツライ」ということに気づくと、少しだけ考え方を変えられる可能性が出てきます。

これがとても大切なのだと私は思っていて。

 

冷静に考えてみると、嫌な上司を常に思っているって、それって実は「大好き」なんじゃないかと…

どうして嫌いな人のことを、ずっと思い続けているのでしょうか。
そんな無駄な時間、止めれば良いのに。

そんなことやめて、「好きな人をずっと思い続けていればよいのに」です。

 

私もあります。

「アノク●ヤローブットバスゾク●ジジイ」とか。
ずっと嫌な出来事や、嫌いな人のことを考えてしまうのです。

でもこれって、誰が最も馬鹿かというと、「私が馬鹿」なんです。

だってそうでしょ?

嫌な人を思い続けているのですから。
嫌なら止めればいいのに。

止めないのですから、「私が馬鹿」ですよね?

 

自分が日々何を考えているのか。

その時に何を思ったのか。

どうしてそう思ったのか。

どうしてその人が嫌なのか。

 

湧き出る思いをそのまま見つめていくと、「でもそれって、自分の発想を変えることはできないのかな?」と思える瞬間がある。

 

「ふつうを止めたくなる瞬間がある」のです。

 

「俺、普通の人止めよ」って。

 

 

野口先生のエピソードは、本当に面白いし愉快である。
普通の人ではないから愉快なのです。

「愉快」の「愉」は、「愉(たの)しむ」です。

「愉しむ」と「楽しむ」は別物です。

「愉しむ」とは、ツライこと、苦しいこと、イライラすること、クヨクヨすること、悲しいこと、寂しいこと、嬉しいこと、楽しいことなど、すべてひっくるめて「愉しむ」なのです。

「楽しむ」は、楽であり、ただその場が楽しいだけ。

愉快とは、すべてひっくるめて「快く生きる」ということです。

 

 

さぁ、目を閉じてみよう。

 

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